DRLs 2020 × 血管撮影装置
こんにちは。angiotechと申します。
放射線技師目線で、血管撮影装置に関連する情報を紹介しています。
自己学習ゆえ、発信内容に間違いなどにお気づきの際は、ご教授いただけますと幸いです。
ちなみにangiotechの由来は、angiography+technician or technique(放射線技師・撮影技術)からとっています。
今回は『DRLs 2020』について書いていきます。
DRL(DRLs)とは
DRL(DRLs)は『診断参考レベル(Diagnostic Reference Level)』の略語です。
DRLは医療被ばくにおける『最適化』の目的を最大限達成するためのツールの1つとして推奨されている指標です。
DRLsはよく間違われることが多いですが、『線量限度ではない』ことに注意したいです。
DRLを超えていないから優れている、DRLを超えているから劣っているというものではありません。
まずは、自施設の装置の線量設定が全国に比べてどの位置・どのレベルで設定しているかを把握・認識する目的で使います。
自施設の線量設定がDRLに比べて多すぎれば、線量過多になっていることが把握できるので、線量設定を見直す機会に繋がります。
逆にDRLに比べて自施設の線量が低すぎれば、本来必要な診断や必要な情報を担保できていないかもしれません。低すぎても見直す必要が出てきます。
各施設によって装置の新古、装置に求める画質レベルも異なりますので、必要な線量設定は変わっていきますので、単に低いから良いというものでもありません。
冒頭でも書きましたが、『最適化』に向けた指標の1つとして捉えるものになります。
DRLの詳細は『DRLs 2015』でも確認してみてください。
DRL(DRLs)2020とは
2015年6月にJ-RIME(Japan Network for Research and Information on Medical Exposures)より、本邦初となるDRLs(DRLs 2015)が策定されました。
この発表を受けて、医療現場における線量最適化の意識が高まりました。
そしてDRLs2015の発表から5年の月日を経て、2020年7月にその内容をブラッシュアップした内容(DRLs 2020)が発表されています。
2020年4月からは、線量管理・線量記録の義務化も始まり、DRLs 2020を活用して、用いている機器の性能やプロトコールが最適かされているか管理していく必要があります。
法令化に伴う線量管理・線量記録に関しては別記事で書いていますので、よかったらみてみてください。
DRLs 2020 × 血管撮影装置
DRLs 2015では、血管撮影・IVR(interventional radiology)領域での線量指標は、アクリル20cmにおける、装置の透視線量率(83パーセントタイル値:20mGy/min)でのみ規定されていました。
DRLs 2020では、装置の基準線量率が17mGy/minへと引き下げされ、新たな項目として臨床のKa,r(装置に表示される患者照射基準点)及びPk,a(装置に表示される面積空気カーマ積算値)が追加されています。
つまり、DRLs 2015では1年に1度の透視線量率評価のみでしたが、日々の臨床における線量評価も加わりました。
また、日々の臨床における線量評価では「術前の脳動静脈奇形に対する診断血管造影」など、手技や疾患群に分類して評価できるようになっています。
ファントムにおけるDRL
アクリル20cmにおける透視線量率の測定方法は、DRLs2015から変更されていません。詳しい測定方法は、『DRLs 2015 × 血管撮影装置』の記事を参照してください。
『DRLs 2020=17mGy/min』です。
この値と自施設の値を比べることによって、他施設との比較を行うことができます。
他施設に比べて、高い場合、また低すぎる場合はなぜそのような設定になっているかを見直すことによって線量の『最適化』をはかります。
臨床におけるDRL
DRLs 2020から、臨床評価も加わっています。
手技別にKa,r(装置に表示される患者照射基準点)及びPk,a(装置に表示される面積空気カーマ積算値)と全国施設の値と比較可能になっています。
血管撮影装置で行われる全ての手技はまだ網羅できていません。
頭部・頸部領域のDRL値
診断血管撮影(術前) | Ka,r 〔mGy〕 | Pka 〔Gy・cm2〕 |
嚢状動脈瘤 | 590 | 89 |
脳動静脈奇形 | 770 | 160 |
脳硬膜静脈瘻 | 1100 | 190 |
頸部頸動脈狭窄/閉塞 | 560 | 120 |
急性脳動脈狭窄/閉塞 | 480 | 83 |
頭蓋内腫瘍 | 720 | 140 |
診断血管撮影(術後) | Ka,r 〔mGy〕 | Pka 〔Gy・cm2〕 |
嚢状動脈瘤 | 510 | 57 |
脳動静脈奇形 | 470 | 77 |
脳硬膜静脈瘻 | 820 | 150 |
頸部頸動脈狭窄/閉塞 | 390 | 72 |
急性脳動脈狭窄/閉塞 | 500 | 83 |
頭蓋内腫瘍 | 1000* | 77* |
血管内治療(IVR) | Ka,r 〔mGy〕 | Pka 〔Gy・cm2〕 |
嚢状動脈瘤 | 3100 | 210 |
脳動静脈奇形 | 4100 | 410 |
脳硬膜静脈瘻 | 4700 | 430 |
頸部頸動脈狭窄/閉塞 | 820 | 150 |
急性脳動脈狭窄/閉塞 | 1400 | 230 |
頭蓋内腫瘍 | 2500 | 320 |
*頸部頸動脈狭窄/閉塞は待機的症例
*診断血管撮影(術後)の頭蓋内腫瘍はデータ数僅少につき参考値
成人心臓領域のDRL値
Ka,r 〔mGy〕 | Pka 〔Gy・cm2〕 | |
診断カテーテル検査 | 700 | 59 |
非CTO PCI | 1800 | 130 |
CTO PCI | 3900 | 280 |
非 PVI RFCA | 560 | 57 |
PVI RFCA | 645 | 89 |
PCI=Percutaneous Coronary Intervention
CTO=Chronic Total Occulusion
RFCA=Radiofrequency Catheter Ablation
PVI=Pulmonary Vein Isolation
小児心臓領域のDRL値(年齢幅による区分)
診断カテーテル検査 | Ka,r 〔mGy〕 | Pka 〔Gy・cm2〕 |
<1歳 | 100 | 7 |
1〜<5歳 | 130 | 12 |
5〜<10歳 | 190 | 14 |
10〜<15歳 | 350 | 47 |
IVR | Ka,r 〔mGy〕 | Pka 〔Gy・cm2〕 |
<1歳 | 150 | 8 |
1〜<5歳 | 210 | 16 |
5〜<10歳 | 210 | 16 |
10〜<15歳 | 500 | 46 |
胸腹部領域IVRのDRL値
Ka,r 〔mGy〕 | Pka 〔Gy・cm2〕 | |
TACE | 1400 | 270 |
TEVAR | 830 | 200 |
EVAR | 1000 | 210 |
TACE=Transcatheter Arterial ChemoEmbolization
TEVAR:Theoracic Endovascular Aortic Repair
EVAR=Endovascular Aortic Repair
最後に
DRLs 2015と比べて、DRLs 2020のファントムの値は20⇨17mGy/minとやや下がりました。
これはDRLs 2015などによって、放射線検査やIVRにおいて5年間で全体的にやや減少した(=線量の最適化が進んだ?)ことを意味しているかと思います。
国際放射線防護委員会が少なくとも3〜5年ごとのDRLsの更新を推奨しているので、また数年後に改定された内容が発表されるかと思います。
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DRLs 2015 × 血管撮影装置
こんにちは。angiotechと申します。
放射線技師目線で、血管撮影装置に関連する情報を紹介しています。
自己学習ゆえ、発信内容に間違いなどにお気づきの際は、ご教授いただけますと幸いです。
ちなみにangiotechの由来は、angiography+technician or technique(放射線技師・撮影技術)からとっています。
今回は『DRLs2015』について書いていきます。
最新は『DRLs2020』に置き換わっていますので、後ほど『DRLs2020』について書きたいと思います。
DRL(DRLs)とは
DRL(DRLs)は『診断参考レベル(Diagnostic Reference Level)』の略語です。
DRLは医療被ばくにおける『最適化』の目的を最大限達成するためのツールの1つとして推奨されている指標です。
DRLsはよく間違われることが多いですが、『線量限度ではない』ことに注意したいです。
線量限度は超えてはならいない線量ですが、DRLは臨床的な必要性があれば超過してもよい値です。
DRLを超えていないから優れている、DRLを超えているから劣っているというものではなく、診療行為の是非を分ける境界でもありません。
まずは、自施設の装置の線量設定が全国に比べてどの位置・どのレベルで設定しているかを把握・認識する目的で使います。
自施設の線量設定がDRLに比べて多すぎれば、線量過多になっていることが把握できるので、線量設定を見直す機会に繋がります。
逆にDRLに比べて自施設の線量が低すぎれば、本来必要な診断や必要な情報を担保できていないかもしれません。低すぎても見直す必要が出てきます。
各施設によって装置の新古、装置に求める画質レベルも異なりますので、必要な線量設定は変わっていきますので、単に低いから良いというものでもありません。
冒頭でも書きましたが、『最適化』に向けた指標の1つとして捉えるものになります。
DRL(DRLs)2015とは
2015年6月にJ-RIME(Japan Network for Research and Information on Medical Exposures)より、本邦初となるDRLsが策定されました。
各モダリティにおける診断参考レベルはDRL、複数の診断参考レベルをまとめてDRLsと称します。
2020年にその内容をブラッシュアップした内容が発表されています。
そこで、2015年に発表されたDRLsを『DRLs 2015』、2020年に発表されたDRLsを『DRLs 2020』と呼んでいます。
DRLsは国、または地域ごとに、アンケート調査等の方法によって各医療機関から集められた標準体型の患者もしくは標準ファントムに対する代表的な線量に基づき、その線量分布の75パーセンタイル値として設定されています。
DRLs 2015 × 血管撮影装置
DRLs2015における血管撮影・IVR(interventional radiology)領域での線量指標は、アクリル20cmにおける、装置の透視線量率で規定されています。
DRLsは線量分布の75パーセントタイル値に設定されていますが、IVRのDRLは線量分布の82パーセントタイル値に設定されており、その値は『透視線量率:20mGy/min』です。
- 透視の線量率のみで、撮影などは規定されていません。
- DRLs策定に伴う調査で、透視線量率と手技のトータル線量と相関を持っていたことから透視線量率でのみの値となりました。
- 82パーセントタイル値としたのは、懸賞に用いたデータがIVR認定技師を受けている施設のデータを基に作られており、ある程度線量管理が行われている施設のデータであるためだそうです。
測定方法は、以下に記載します。
診断参考レベル運用マニュアルから測定手順を抜粋しています。
赤字で注意点について記載します。
透視線量率の測定手順
- X線管焦点ー検出器間距離(SDD)は測定目的の検査・IVRに使用している距離とする。なお、一般的な測定ではSDDを100cmとする。
- 検査テーブル上にファントム(PMMA(アクリル)20cm)と線量計をセットする。測定では被写体からの後方散乱の影響を加味した値が必要であるため、線量計とファントムが密着(近接)するようにセットする。なお、線量計は後方散乱も同時に測定できる電離箱線量計(プローブは3~6cc程度)が望ましいが、半導体線量計による測定も可能である。半導体線量計を用いた場合は後方散乱線の測定ができないため、後方散乱線(後述の注意点を参照)が必要となる。
(寝台の上)ファントムの下に線量計を配置するため、線量計の厚み分アクリルを浮かせる必要があります。電離箱線量計なら約5cmです。アクリルの端を本などを使用して、浮かせます。
マット上にアクリルを配置するのは安定しないため、マットなしで測定しても大丈夫です。
最近、導入されている検出器で多いPiranha(ピラニア)は半導体検出器です。
- 線量計の測定中心をインターベンショナル基準点(interventional reference point)にセットする。インターベンショナル基準点への線量計のセット方法は、先ず、線量計をCアームのアイソセンタにセットする。アイソセンタはCアーム正面方向にて画面の中心に線量計を移動し、次にCアームを90度回転させ側面方向にてテーブル高さを調整し線量計が画面の中心となるようにセットする。アイソセンタへ線量計がセットされた状態で、X線管側へ15cm近づけた点がインタベーショナル基準点となり、線量計をその位置にセットする。なお、インターベンショナル基準点(interventional referenece point)はIECやJISにより名称が変更され、現在では患者照射基準点(patient entrance reference point)が用いられているが、両社は同じ位置を示す。
アイソセンタを探す場合は、画面中心部のみがみえるように左右の絞りを入れて探すと良いです。また、最大拡大視野で行った方が正確なアイソセンタを発見できるかと思います。
- 検出器のサイズ、透視プロトコール(自動輝度調整機構(ABC)、パルスレート等)は目的の検査、IVRで使用している設定にする。
インチサイズの規定がありません。インチサイズもその検査で最も使用するインチサイズで良いかと思います。
- 1分間の透視を行い、後方散乱線を含んだ線量率を測定する。
- 測定値が照射線量[mR、C/kg]時と吸収線量[mGy]時の例を示す。
D=X・Kp・Ktp・0.00876 (測定値の単位がmRの場合)
D=X・Kr・Ktp・0.003397 (測定値の単位がC/kgの場合)
D=X・Kr・Ktp (測定値の単位がmGyの場合)
*Kr=線量計の校正定数、Ktp=大気補正係数
大気補正係数(ktp)=(273.2+(測定時の温度))/(273.2+22)・1013/(測定時の気圧)
で求めることができるため、測定時の温度・気圧をメモしておいてください。
また本来出れば、測定機器固有の個体差もありますので、校正定数も加味する必要があります。
半導体検出器にて測定した場合の注意点
- 検出部の前面以外が遮へいされているため、後方散乱線の測定ができない。
- 半導体線量計をインタベーショナル基準点にセット後、自動輝度調整機構(AEC)の関心領域の外へ検出部を配置する。関心領域内へ入ると自己吸収により透視条件が高くなり、測定線量も高値を示すので注意すること。
装置上でABCの領域を確認して、ABC内に入らいないように線量計を配置します。
- 測定値の1.3~1.4倍が後方散乱線を含んだ線量となる。このため、後方散乱係数を1.3~1.4として、測定値へ乗ずる。
方向依存性のある半導体検出器では後方散乱係数を含んでいません。
DRLは入射表面線量(ファントムからの後方散乱を含んだ線量)のため、半導体で測定した場合は後方散乱係数を加味する必要があります。
最後に
DRLs 2015時点ではファントムでの透視基準線量を測定することのみですが、DRLs 2020では、患者の線量管理にも言及されています。
次の記事でDRLs 2020について書きたいと思いますので、合わせてみていただけると嬉しいです。
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初出掲載:2021年3月1日
修正掲載:2021年3月14日
CVIT2020 × 詳細
こんにちは。angiotechと申します。
放射線技師目線で、血管撮影装置に関連する情報を紹介しています。
自己学習ゆえ、発信内容に間違いなどにお気づきの際は、ご教授いただけますと幸いです。
今回はCVIT2020に参加したので、感想を書きたいと思います。
ちなみにangiotechの由来は、angiography+technician or technique(放射線技師・撮影技術)からとっています。
- CVIT2020 概要
- パクリタキセル問題
- 機能的心筋虚血評価(虚血評価)
- コメディカルシンポジウム4(各社装置の透視・撮影画像比較)
- dTRA(distal trans-Radial Approach)
CVIT2020 概要
CVIT2020は、『一般財団法人日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)☑』が主催する学術集会で、2021年2月18日(木)~21日(日)に開催されました。
angiotech的に注目したポイントは『パクリタキセル問題(×リアルワールドデータ)』、『機能的心筋虚血評価』、『コメディカルシンポジウム4(各社装置の透視・撮影画像比較)』、『dTRA(distal trans-Radial Approach)』の4ポイントです。
パクリタキセル問題
パクリタキセル問題は、2018年にkatsanoらによる報告を契機に世界的に広がった問題です。
katsanoらの報告内容は、『大腿膝窩動脈においてパクリタキセルコーディングデバイス(PTXデバイス)を用いて治療を行うと、その治療を受けた患者は対象群に比較して5年死亡のリスクが約2倍になる』です。
つまり、デバイス固有の問題で長期成績が悪化してしまうという、インパクトの大きなものでした。
これを受けて米国では、FDA(日本で言う厚生労働省)がPTXデバイスの使用に関して厳しい見解を示す一方、日本では、現場医師へのPTXデバイスの使用を委ねる、というもので米国に比べて緩いものでした。
現場医師の意見を反映した通達ではありましたが、なかなかkatsanoらによる報告を否定することはできませんでした。
その理由は、katsanoらによる報告がエビデンスレベルが最も高いRCT(ランダム化比較試験)だったからです。
この問題に立ち向かうため、日本国内では東邦大学医療センター大橋病院:中村正人先生を中心に、日本人を対象に『パクリタキセルを用いた末梢血管治療デバイスの長期的安全性に関する研究』が行われ、2021年1月末にその結果が公表されました。
結果は、『本邦では、非PTX機器の使用に比しPTX機器使用による死亡リスクの上昇は認められず、大腿膝窩領域に対するPTX機器使用の安全性を示唆するものと考える』とし、3学会(CVIT、IVR学会、血管外科学会)及び、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)からも声明が出されました。
本内容に関しては、リンク先でご確認できます。
声明の中では、
- 患者状態に鑑みリスクベネフィットを考慮してPTXデバイスを使用すること
- 海外における情報と合わせ本邦の代表的な成績として今回の成績を用いたインフォームドコンセントを行うこと
としています。
この結果で、ひとまず本邦におけるパクリタキセル問題は1区切りとなったものと思われますが、まだまだ議論の余地があると思っています。
リアルワールドデータ
今回のパクリタキセル問題も契機に、リアルワールドデータ(レセプト・DPCデータ・診療録など実臨床に基づくデータ)の活用が注目を浴びています。
パクリタキセル問題では、RCTの結果(PTXデバイスへのネガティブな結果)と現場医師の感覚(PTXデバイスへのポジティブな印象)が異なることが問題となりました。
リアルワールドデータを活用するうえで、プラットフォーム(検討項目・定義の統一化など)が異なること、各医療機器・デバイスメーカーや産官学の思惑、が問題となります。
実際、中村先生主導の『パクリタキセルを用いた末梢血管治療デバイスの長期的安全性に関する研究』もデバイスメーカー間で持っているデータが異なることが問題となり、結果解析の長期化に繋がったそうです。
今後は、どう臨床現場の情報をいかに活用していけるかが、国外へデータを発信できる強い日本になれるかのポイントになってくるかと思いました。
このリアルワールドデータを活用できれば、質を高めることでRCTに近い発信もできるようになります。また主はRCTで、副として(患者リスクに応じた提案など)はリアルワールドデータ、などの使い分けができるかもしれないですね。
機能的心筋虚血評価(虚血評価)
2018年4月、安定型冠動脈疾患に対する待機的PCI(経皮的冠動脈インターベンション:percutaneous intervention)の算定要件に虚血評価が加わりました。
これは、以下のような事柄を参考に改定されたものです。
- 米国では、2009年にPCIの適正基準の概念(AUC:Appropriateness use criteria)が公表され、2017年には安定虚血性疾患の虚血評価としてFFRが採用されている。下記の治験が基になっている。
- CORAGE Trial:安定型冠動脈疾患に対しては、必ずしもPCIを行うのではなく、薬物治療も妥当。
- DEFER:FFR(心筋血流予備量比:Fractional Flow Reverse)≧0.75であれば、PCIを延長する治療戦略が妥当。
- FAME:血管造影に基づくPCIに比べ、FFRに基づくPCIが有利。
- 上記の背景を受けて、日本でも「中央社会保険医療協議会(中医協)」で安定冠動脈疾患に対するPCIに関する議論が始まりました。下記の内容が議論された1部です。
- 日本国内ではPCIの施行数が伸び続けているが、これは世界の中でも特殊な状況になりつつある。
- 関連学会のガイドラインでも、虚血がないことが証明されている患者にはPCIの適応はないとされている。
- (平成27・28年のデータで)安定冠動脈疾患に対するPCI施工前の虚血検査の平均施行率が37.8%と低い。さらに、院内施行率が0~100%とバラツキが多く、病院間の差が多いことも明らかであった。(院内施行率はハイボリュームセンターなどと相関はなし。)
- 血管造影上75%以上である 冠動脈疾患に対して、追加の検査で実際の心筋の機能的虚血の有無を確認したところ、46.4%の病変で虚血を認めなった。
虚血評価を算定要件として加えたことで、2019・2020年は国内のPCI件数は頭打ちとなってきたようです。
今後は、患者背景に合わせたモダリティ選択と、虚血部位と虚血範囲に応じた適応や治療戦略が問われる時代になると思われます。
コロナ禍でCTの件数が一時的に増えていると思いますが、今後の虚血評価で使われるモダリティの使用頻度に注目していきたいです。
コメディカルシンポジウム4(各社装置の透視・撮影画像比較)
各社装置(C・島・G・S・P)のユーザーから、透視・撮影の見え方の違いについて発表がありました。
京都化学社 × 佐藤久弥先生(昭和大学病院:放射線技術部)が作成された「動態ファントム」を使用して、周期的に動くワイヤや希釈造影剤の視認性、および臨床画像の見え方や、画質の調整内容について発表されていました。
各社装置は年代もバラバラであったため、どこのメーカーが優れているか、というものではありませんでした。
今後、透視・撮影画質に関しては、京都化学社 × 佐藤久弥先生(昭和大学病院:放射線技術部)が作成された「動態ファントム」で評価するのが一般的になるかもしれません。
dTRA(distal trans-Radial Approach)
近年では、TRA(trans-Radial Approach)は出血性合併症においてTFI(trans-Femoral Approach)より優位で良好であること、STEMIにおいてもデフォルトストラテジーとすべきとの臨床評価が示されており、TRIが世界で標準アプローチとなってきた。
今後は、より低侵襲なdTRA(distal trans-Radial Approach)が標準のアプローチとなる時代が来るかもしれないです。
脳外分野でも、dTRAが行われ始めているそうです。
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CVIT2020 × 概要
自己紹介
こんにちは。angiotechと申します。
放射線技師目線で、血管撮影装置に関連する情報を紹介しています。
自己学習ゆえ、発信内容に間違いなどにお気づきの際は、ご教授いただけますと幸いです。
今回はCVIT2020に参加したので、感想を書きたいと思います。
ちなみにangiotechの由来は、angiography+technician or technique(放射線技師・撮影技術)からとっています。
CVIT2020
CVIT2020は、『一般財団法人日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)☑』が主催する学術集会で、2021年2月18日(木)~21日(日)に開催されました。
CVITは、循環器領域 × カテーテル領域、の最も大きな学会の1つです。
元々、2020年内に開催される予定だったのものが、コロナ禍の影響を受け、延期&完全Web開催となりました。
今回の大会長は、公立刈田綜合病院:片平美明先生で、大会テーマは『すべては患者さんのために~東北からのメッセージ~』で、参加者は延べ5000名強とのことでした。
次回はCVIT2022となり、東海大学医学部付属病院:伊刈裕二先生が大会長で、2022年7月21日(木)~7月23日(土)開催予定です。パシフィコ横浜で開催予定ですが、コロナ禍の状況によってはWeb開催になるとのことです。
来年は大会場付近で、美味しいご飯&お酒をいただきたいものです。
注目ポイント
angiotech的に注目したポイントは『パクリタキセル問題(×リアルワールドデータ)』、『機能的心筋虚血評価』、『コメディカルシンポジウム4(各社装置の透視・撮影画像比較)』、『dTRA(distal trans-Radial Approach)』の4ポイントです。
詳細は、別途記事を書きたいと思います。
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血管撮影装置 × 線量管理 × 線量記録
初投稿になります。
初めまして。angiotechと申します。
放射線技師目線で、血管撮影装置に関連する情報を紹介していきます。
自己学習ゆえ、発信内容に間違いなどにお気づきの際は、ご教授いただけますと幸いです。
ちなみにangiotechの由来は、angiography+technician or technique(放射線技師・撮影技術)からとっています。
概要
今回のテーマは『線量管理・線量記録』です。
2020年4月から、法改正により血管撮影装置も『被ばく線量の管理及び記録』が義務付けされました。
『何をどう管理したら良いのか?』
『線量管理ソフトは導入すべきなのか?』
このブログが目にとまった方は、様々な疑問や問題点を解決しなければならなかった、あるいは今もどうすべきか悩まれているかと思います。
少しずつ、本ブログでもangiotechが勉強した内容から、現在の見解をお伝えさせていただけたらと思っております。
法改正の内容について
はじめに法改正の内容について触れたいと思います。
『平成31年厚生労働省令第二十一号』改正により、第一条の十一が新設されました。
本条項により、
- 責任者の配置
- 指針の策定
- 職員研修の実施
- 被ばく線量の管理及び記録
が義務続けされました。
つまり、『責任者の配置』、『指針の策定』、『職員研修の実施』、『被ばく線量の管理及び記録』を行わないこと、法律違反となってしまうこととなりました。
ただし、今のところ(2021年3月現在)罰則に関する規定は特にないです。
この中で、今回は『被ばく線量の管理及び記録』についてまとめます。
線量管理
線量管理として、以下がポイントとなります。
- 線量管理体制
- 検査プロトコル管理
- 線量管理の実施方法
本記事は、日本医学放射線学会のガイドラインを参考にしています。
線量管理体制
医療放射線安全管理責任者を立てて、責任者は線量管理対象の放射線診療について被ばく線量を評価する必要があります。
医療放射線安全管理責任者は、線量管理組織(医療放射線管理委員会等)において、線量管理に関する審議を年1回以上行うことが望ましいとされています。
検査プロトコル管理
検査プロトコルを一覧可能なリストを作成し、適宜見直しを行う必要があります。
リストには被ばく線量を規定する因子(管電圧、管電流、撮影回数、撮影部位、パルスレートなど)の記載する必要があります。
線量管理の実施方法
線量管理として、被ばく線量の評価を行う必要があります。
線量測定は年1回以上行い、診断参考レベル(DRL:Diagnostic Reference Level)を測定・比較検証して、防護の最適化を行う必要があります。
DRL測定方法
- アクリル20cmを(線量計を配置するために5cmほど浮かせて)寝台上に配置する。
- アクリルと寝台の間に電離箱線量計を配置する。
- アイソセンタより、寝台の高さを15cm下げる。(患者照射基準点へ線量計のプローブを配置する。)
- 透視を1分間(1min)出し、線量(mGy)を計測する。そのデータがDRLを参考にした透視線量率(mGy/min)となる。
*SID=100cm。
*Icnhサイズは、その検査で良く使用するものを選択する。
*マットはなしでOK。
*DRLs2020では、透視線量率=17mGy/minです。
(この値より大きいと全国の施設と比べると線量が高い、小さいと全国の施設より線量が低い、と判断することができます。)
*DRLの考え方、各モダリティにおけるDRL測定方法などは、J-RIMEのホームページを参照しています。
線量記録
線量記録は、検査・治療後の記録として患者個々の線量情報を残す必要があります。
記録項目として、「面積空気カーマ積算値」「患者照射基準点空気カーマ(or 入射表面線量)」「撮影部位」の記録が必要にります。
これに加えて、撮影枚数、又は撮影ごとのフレームレートと撮影時間の記録も行うことが望ましいです。
今のところ、これらの項目が残っており、患者データと照合が可能であれば問題になりません。
線量管理ソフトの必要性
線量管理ソフトは、RDSR(Radiation Dose Dtructured Report)を管理するWorkStationを指します。
RDSRをざっくり説明すると、シリーズごとの細かい線量情報を持っている線量データの集合体です。比較的新しい規格のため、対応できない装置もあります。最近の装置は基本的にRDSRは出力できるようになっています。
細かい線量情報を持っているので、線量管理をする上では最適と考えられていますが、現状は、まだガイドラインに明確な記載がないため、必須ではないと考えています。
CTの場合も、例えば「エックス線CT被ばく線量管理指針(公益財団法人日本医学放射線学会)☑」においては、
- DICOM 規格の線量レポート(DICOM Radiation Dose Structured Reports: RDSR)を作成し記録・保存すること。RDSR が作成できない CT 装置の場合は、検査ごとの被ばく線量やスキャン条件 (mAs) 等を記録・保存すること。
とありますが、 線量管理ソフトで管理すべきとは書いていません。
ただし、各種条件も含めて管理するには、線量管理ソフトがないと日々の作業が煩雑になるかもしれないです。
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